02.熱だけが残った
目が覚めると湿った敷布にまだ暖かみのある誰かの温もり。
しかし誰もいない。
これは一体どういう事なのだろうか?
「曹丕様。
貴方は一体いつまで寝ておられるのですかな?
全く、いいご身分な事だ。」
そう言って寝室に入って来たのは司馬懿である。
彼が何故ここに?
「司馬懿。寝室に入るなと言わなかったかー。」
三成は人に見られるのを嫌がる。
その為に寝室からは人を遠ざけ、誰も近づけさせない様にしていたはずだ。
例え司馬懿であろうともそれは例外ではない。
「ー…一体何のお話ですかな?
昨夜私に起こしに来いと命令されたのは貴方ではありませんか。
全く、貴方はまだ夢から覚めてはいないようですな。」
「……夢?」
まさかーー。
「…三成はどこにいる。」
「三成?はて、そのような者存じませんが。一体どこの者です?
しかもその名前ー。
…この国の者の名前ではありませんな。」
聡明な曹丕はこの一言で全てを悟ったようだった。
今までの事が全て夢だったとはー。
……にわかに信じ難いことだ。
だがしかし、
この敷布に残る愛しい者の熱はきっと
忘れる事のない真実ー。