13.縛る
まず目隠しをされたのは覚えている。
しかし体が動かぬとはどういうことなのかー。
手足を拘束され三成自身のものも締め上げられ達する自由さえ奪われている。
「左近。いつまで俺に触れぬ気だ。
お前にこんな趣味があったとはな!」
強がって憎まれ口を叩いてみるも左近の返事は無い。
まさか俺をこのままにして部屋を出たのではあるまいな?
嫌な予感が脳裏を掠め、さっと血の気が引く。
ーと、その時急に三成の天を向く竿を掴む大きな手。
「はあっ…!」
予期せぬ事だっただけに三成は声を上げる。
触り方で分かる。この手は左近だ。
しかも手の角度からして丁度前にいるに違いない。
「…っつ、左近、何処に行っていた。」
恨みがましく左近を罵る。
三成の苛立は頂点に達していた。
しかしそんな主の罵倒に意を介さぬ飄々とした答え。
「どこにも行ってませんよ?」
その答えに増々苛立がつのる。
「嘘だ!」
「いいえ、本当です。
殿がいけなくて苦しそうな様を見ておりましたから。」
「っ!いい趣味だな。俺をこんな風にしてただで済むと思うな!」
「…殿が素直に次の戦でも前線に出ないとお約束してくだされば
左近はこんな真似をしなくて済むんですがね。」
「それとこれとは話が違う!お前はまだ納得していないのか!」
「納得するも何も
左近は殿を危険な場所にやる事は嫌だと言っているんです。
それを左近の我が儘と罵られては困りますな。」
「さぁ殿、前線には出ぬと誓って下さい。
さすれば縄を解き、殿の望む通りに抱いてさしあげますよ。」
誓えぬ事を誓えと言われて業を煮やした三成は
左近の確かな位置が分からないながらも
荒々しい口づけをし、歯を立てる。
「くっ、殿!」
突然の主の逆襲に左近は血のにじむ口元を抑える。
してやったりな三成は自身の口に付いた血を舌で舐めとる。
ふんと鼻をならし、満足した三成はそのあと左近の逞しい胸に埋もれ
「…俺もお前を失いたくないのだ。」
そう告げたのであった。