1.不敵な笑み
大事な軍議前に三成を抱く魏の王子曹丕。
しかし今日は何だか気が乗らない。
それは恋人の態度が原因だった。
いつもならばどんな状況でも甘い声を漏らす三成だが
今日は心ここにあらずー。
別の事で頭がいっぱいなようである。
その態度がきっと癇に障るのだ。
「今日は可愛い声を聞かせてはくれぬのか三成…。」
そう言って柄にも無く三成の気を引いてみる。
「…声など出している場合ではない。
早くいけ、曹丕。」
「ーつれない事だ。」
だがそう言われたからといって腰を使う気にはなれないが、
三成の感じる箇所をゆるゆると焦らすように責めてみる。
そんないたずらめいた事をしていた曹丕だが
ふと、ある事に気付く。
三成の頭の中はきっとこの人物の事でいっぱいなのだ。
ー三成に過ぎたるもの、島左近ー
「そういえば、今日の軍議はお前の家臣も参加するのだったな。」
そう、復活した魔王遠呂智を倒した三成の家臣・島左近は
役目を終えたという事で主である三成の元に戻って来ていたのだ。
その左近は今までの主従の空白を埋めるかのように
日中はずっと三成に付き従い、
三成の仕事が終わるまで側に控えるという見上げた忠臣であった。
しかし、遠呂智の世に来てからずっと三成と一緒にいた曹丕は面白くない。
今だってやっと左近を巻いて得た恋人との時間なのに
当の恋人の頭の中はその忠臣の事で一杯なのである。
「…三成。やつは私とお前の関係を知っているのか?」
びくん!三成の肩が揺れる。
「…知らないだろうな。」
そう言って曹丕のあたえる弱い快楽を堪える三成。
伏せられた目には何故だか少し哀愁の色が見えた。
「やつと寝た事はないのか?」
「…っ!ある訳ないだろう!
左近は俺の家臣だ!馬鹿な事を言うな!」
「では知られても良いではないか。
いや、知っておいてもらった方がいい。
私と三成の時間を邪魔してもらっては困るからな。」
「そうだ丁度良い。この姿を左近に見せてやればいい。
説明する手間も省けるー。」
「!!馬鹿な事を…!
っあぁ!!」
ゆるく動かしていた腰を一気に奥まで貫く。
分かってはいる。分かっているのだ。
三成は自分にも他人にも清廉を求める。
だから知られたくないのだ家臣に自分の色恋など。
本当に島左近と関係があったとしたら
自分とはこの様な関係になっているはずがないのだからー。